「オープンソース」を使ってみよう (第7回:ドロンくん編)

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ドロンくんの開発者 
今岡 通博 (いまおか みちひろ)
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■「ドロンくん」ってなーに

ドロンくんはAndroid携帯を搭載して動作する音声認識ロボットです。誰でも簡
単に、しかも安価に手作りできるホビー用、教育用のロボットなのです。

ロボットといえば、多種多様なセンサを備え、高度なCPUを搭載した高価で複雑
な機械を想像するかもしれません。しかしドロンくんは、Android携帯を搭載する
ことで本来ロボットが備えている、センサや計算能力をこのスマートフォンに肩
代わりさせているのです。ですから、Android携帯などのスマートフォンを持って
いる人なら誰でも安価にロボットを作れてしまうのです。

▼ドロンくん(財団法人ソフトピアジャパンより提供)

■わたしのロボット観

ドロンくんはロボットですが、人間に似せた2足歩行の機械ではありません。美
人のハリボテをかぶった擬人化した機械でもありません。わたしは、ロボットと
は自らが状況を判断して自らが動く機械のことだと思っています。

■ドロンくんの特徴は

【第一】ドロンくんはスマートフォンで動かすロボットだと云うことです。
ドロンくんの特徴はなんと言っても、本来ロボットが備える頭脳やセンサの部分
をスマートフォンに置き換えたところでしょう。最近のスマートフォンはGPS
をはじめ方位、加速度、イメージセンサなどロボット制御に必要な多種多彩なセ
ンサを備えています。

また、計算能力においては数年前のパソコンに劣らない処理能力を持っていま
す。それが人の手に収まるほどのコンパクトなボディに納まっています。ですか
ら、ドロンくんやその他の電動玩具に、高機能な機器を搭載して自走させること
が可能になったのです。

【第二】何となれば簡単にクラウドだって利用できてしまいます。
いくらスマホが高機能になったとは云え、最新のPCに比べればCPU性能やスト
レージの容量においては遠く及びません。しかし、Android携帯には強い見方が
あります。それはクラウドです。クラウドとはインターネットを通じて様々な
サービスを提供する仕組みのことです。何となれば全世界に分散する天文学的
なCPUパワーとストレージを利用することも可能なのです。

ドロンくんに搭載されたAndroid携帯からもインターネットに繋がる環境であれ
ば、これらのコンピューティングパワーをドロンくんの頭脳として簡単に利用で
きるのです。ドロンくんが搭載する小さなおつむは、実は世界中のクラウドと繋
がっているわけなのです。

事実、ドロンくんのデモで音声認識をさせて人間の発話に応じて動作させるプロ
グラムがありますが、これもクラウドで提供されている日本語音声認識サービス
を使っているのです。

現在Googleが提供する音声認識サービスは日本語以外にも、英語、中国語のサー
ビスがあります。これらを使えばマルチリンガルドロンくんだってできてしまい
ます。ドロンくんがこれらの言葉を喋る国に行ったとしてもちゃんと言葉を理解
できるようになるのです。

【第三】特徴はスマホとドロンくんはオーディオケーブルのみで繋がっています。
ドロンくんを実際に動かすためにはAndroid携帯からの命令でモータを回してや
らなければならないわけですが、その制御信号はDTMFで行っています。
DTMF(英: Dual-Tone Multi-Frequency)とは、ボタン式の電話で相手の電話番
号を交換機に伝える手段です。

2種類の周波数を組合せたトーン信号で0から9までの数字といくつかの記号を伝
える方式です。この記号伝送方式を使ってAndroid携帯からモータ制御回路に信
号を送っています。信号を受け取ったモータ制御回路にはDTMFデコーダがあり、
送られてきた2種類の周波数のトーン信号を聞き分けて何番のボタンが押された
かを判断しています。

例えば、「1」のボタンが押されたときは右のモータを動かす。「2」の場合は左
のモータ、「3」の場合は両方のモータと云う様に、モータ制御回路とAndroid携
帯側で取り決めをしておけば、Android携帯に組み込んだプログラムからモータ
を自由に制御することができるわけです。

DTMFを採用した理由のひとつにAndroidSDK(Android携帯で動かすアプリケーショ
ンプログラムを作成するためのツールやライブラリー群)の中に、DTMFを発声さ
せる機能を簡単に使える仕組みがあったことです。また、このDTMFデコーダが安
価(1個あたり150円)に入手できることも採用理由に挙げられます。

ドロンくんとAndroid携帯とはオーディオケーブル一本で繋がっているだけです
ので、これを抜き差しするだけで、Android携帯とドロンくんとを簡単に脱着す
ることができます。機動戦士ガンダムで云えば、ドロンくん本体がモビルスーツ
でAndroid携帯がコアファイターという具合によく例えられます。

【第四】ブレッドボードで回路を実装しています。
この記事の大半の読者はソフトウエア関連の皆さんかと思います。そういった
方々にロボットを作ってみませんかと云っても、すぐに作ってみようという気に
ならないかもしれません。プログラムは組めても電子工作はちょっと苦手と云う
方もいらっしゃるかもしれません。そういう方のために、電子回路の部分はブ
レッドボードに実装することにしました。写真のドロンくんのフレームに載った
白いボードがブレッドボードです。

本来電子工作とはプリント基板に電子部品を半田付けする作業がともないます。
しかし、このブレッドボードを使えば、穴に部品を差し込んでいくだけで回路を
構成することができるのです。

半田付けだと、火傷するし、部屋は汚れるし、机には焦げ跡が付くしで敬遠して
いた方にも、ブレッドボードだと手軽に電子工作を始めることができます。それ
に部品を差し込むだけですので、回路の修正も簡単に部品を抜き差しするだけで
行えます。また、一度使った部品でも、ボードから抜いてしまえば、また別の用
途に使えますので、一個のブレッドボードがあれば、同じ部品を何度も使えて
色々な回路を試すにはとても経済的です。

▼白いボードがブレッドボード

【第五】ドロンくんのプログラムは自由に組み替えて使えます。
ドロンくんを動かすためにはAndroid携帯にアプリケーションプログラムを組み
込む必要があります。先にも紹介しましたAndroid SDKを使えばJavaが組める人
なら誰でもドロンくんを動かすプログラムを作れます。

Android SDKはこちらから無償でダウンロード可能です。Windows版、GUN/
Linux版、MacOS Xなど各種プラットフォームに対応したものが用意されていま
す。これ以外にJavaSDK及びEclipseが必要です。これらも無償でダウンロード
可能ですから、PCさえあればすぐにドロンくんのプログラムを開発できるのです。

Androidのプログラミングについてはこれからと云う方は、日本Androidの会が各
地でプログラミング勉強会などを無償あるいは会場費程度の負担で開いています
ので、そちらに顔を出してみるのも如何でしょう。各地に支部がありますし、本
会あるいは支部のMLでのサポートも充実していますのでMLに登録されるのもよ
いかと思います。

【第六】安価に作れること。
ドロンくんの開発方針で譲れないのは作製にかかるコストを低く抑えることです。
モータやギアボックスはどうしても市販品を買う必要がありますが、電子回路周
りは徹底的に低コスト化を図りました。秋月電子商会などの通販を利用すればブ
レッドボード込みで500円前後(送料及び代引き手数料は別)で部品を集められ
るのではないでしょうか。

Android携帯からの信号でモータを駆動する手段は色々あるとは思います。おそ
らく最もスマートな方法はBluetoothを使うことでしょう。しかしドロンくん開
発当初のAndroidのバージョンでは使いたいプロトコルプロファイルが使えませ
んでした。また、ドロンくん側に搭載するBluetoothのモジュールが非常に高価
で、安くても7000円前後はしたかと思います。そんな訳で、第三の特徴でも挙
げたDTMFを採用したのです。

▼ドロンくんの部品リスト

※部品リストの「抵抗3.3Ω」は正しくは「3.3KΩ」です。

【第七】これらのリソースは全てオープンソースです。
あまりたいしたものではないのですが回路図もプログラムも全てオープンソース
です。自由に改変して使って頂いて結構です。

技術評論社のSoftware Designという月刊誌の去年の10月号と11月号にソフトウ
エア編とハードウエア編に分けて掲載しました。記事には回路図、部品表、ソー
スコード等が掲載されています。これらは自由にご利用いただけます。また、こ
れらのリソースは後述するホームページを通じて公開する予定です。

▼ドロンくんの記事が掲載された:Software Design

■どんな人が使えばいいの

私が最初にドロンくんを作製した動機は、地元四国松山でAndroid勉強会を開催
するにあたり、スマホの液晶画面に表示されるだけのアプリではなく外部機器
をコントロールするアプリが作れれば、受講者の興味を引くのではと考えました。

そのひとつがドロンくんだったのです。ドロンくんはAndroid勉強会の教材とし
て誕生したのです。ですから、Androidに限らずプログラミングを勉強しようと
する皆さんの教材として使って頂きたいと思っています。

また、半田付けやプリント基板を設計するのは苦手だけど、電子工作を始めてみ
たいという方にも最適です。先にも挙げたようにブレッドボードを用いています
ので、電子工作に対する苦手意識のハードルは幾分か下るかと思います。

■わたしもドロンくん作ってみたーい!

ありがとう御座います。やはり網羅的にまとまっているのがソフトウエアデザイ
ンの記事ですので、それを先ずご一読頂くのがよいかと思います。
ちなみに、技術評論社のHPを見てきたのですが、11月号は既に品切れのようで
す。残念!

次に部品の調達ですが、モータやギアボックスやフレームはタミヤのロボット工
作教材セットが便利です。

▼タミヤのロボット工作教材セット

上記写真はAO-7014 ロボット工作教材セット(A)です。以下のURLから転用
http://www.tamiya.com/japan/robocon/robo_parts/ao_7014/index.htm

あと電子部品ですが秋月電子通商の通販を利用すれば地方でも一通り部品は調達
できます。ただドロンくん一台分の部品を買うだけなら送料と代引き手数料が
もったいないですし、抵抗やコンデンサは一本単位の販売にはなっていません。
日本Androidの会大分支部などでは購入希望者を集めて共同購入しているようで
す。大分の方は支部に問合せてみてはいかがでしょう。それ以外の皆さんもそれ
ぞれの地域で購入希望者を募ってみてはいかがでしょうか。みんなが集まってド
ロンくん製作に取り組むのも楽しいかと思います。

■各地でセミナーやワークショップやってまーす

おもに日本Androidの会の勉強会やOSCを中心にブース展示やセミナーを行ってい
ます。ドロンくんを発表して1年以上経ちますので各地のOSCも一巡してきまし
た。最近は別のネタ(激安Aruduino互換機の作り方など)でブース展示やセミ
ナーを行い始めたところです。OSCのセミナーではドロンくんとは別ネタで喋っ
ているかもしれませんが、ブース展示で筆者を見かけたときは、ドロンくんの質
問など大歓迎です。

また、OSCの翌日など地元の日本Androidの会の支部の協力でワークショップを開
催したりしています。短くても半日、事情が許せば午前中からみんなでドロンくん
の製作に取り組んでいます。今後のワークショップ開催情報に付きましては、この
後に紹介する情報源から入手下さい。

▼大分で開催したワークショップでの皆さんの作品

■あなたのドロンくん度チェック!

去年は雑誌にも製作記事を載せましたし、各地でドロンくんワークショップを開
催しています。今後そんな中で全国で様々なドロンくんが登場してくることで
しょう。そこであなたが作ったロボットがどの程度ドロンくん開発当初の理念を
受け継いでいるか判断基準を示すことにしました。

以下にチェック項目とレイティングを記しておきます。ちょっと厳しいですが
5.0点満点で4.0以上がドロンくんと呼べることにしたいと思います。皆さんも頑
張ってドロンくん製作に挑戦してみてください。

ドロンくん規約第1条 スマホを搭載して自走すること 1.0
ドロンくん規約第2条 オーディオケーブルで接続されていること 1.0
ドロンくん規約第3条 クラウドを利用できること 1.0
ドロンくん規約第4条 ブレッドボードに回路を実装していること 0.5
ドロンくん規約第5条 製作実費3500円以下であること 0.5
ドロンくん規約第6条 オープンソースであること 1.0
尚この規約およびレーティングは予告無く改定されることがあります。

■ドロンくんについてもっと詳しく知りたい人は

筆者のメールアドレス:imaoca[at]gmail.com
※メールアドレスの「at」は「@」に変えてお送りください。
◆twitter id: @imaoca
◆twitter tag: #delonkun
◆ドロンくんオフィシャルサイト:http://www.delon.jp
実は上記のページは全然更新できていません。HPの更新など協力者を募集して
います。それとドロンくんのキャラクターなども公募します。よろしく御願いし
ます。

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■最後に告知系

岐阜県大垣市で開催される 『Ogaki De veloper Day 2011 Spring』の教材として
ドロンくんが採用されることになりました。実際にドロンくんの製作や改造などを
楽しめる一泊二日のスケジュールとなっています。お近くの方は是非ご参加されて
はいかがでしょうか。何と徹夜部屋は主催者が無料で用意するという気合の入れよ
うです。ドロンくんで大垣の夜を熱くしよう!
サタデイナイト・フィーバーin大垣ですな。USTでも中継して欲しいな。

●『Ogaki De veloper Day 2011 Spring(ODD 2011 Spring)』について
ODD 2011 Springでドロンくんワークショップを定員15名で開催することとなり
ました。ODDについてはFacebookで活動しておりますので、詳細はFacebookご覧
頂ければと存じます。

以下はODD 2011 Springの概要となります。どうぞよろしくお願い申し上げます。

Ogaki Developer Day 2011 Spring
時間 2011年5月21日 13:00 – 5月22日 16:00
場所 ソフトピアジャパン・センタービル 11階 研修室

詳細 
今回はいつもの「モクモク」と「ドロンくん」ワークショップの2本立てです!
【全体スケジュール】
5月21日(土)
 12:45 開場
 13:00 開始&自己紹介
 18:30 一旦撤収
 19:00 懇親会
 21:00 宿泊施設 or 徹夜会場!!
5月22日(日)
 10:00 開場
 13:30 LT(報告会)
 16:00 終了

【ドロンくんワークショップ】
5月21日(土)
 13:30〜13:50 音声認識ロボット「ドロンくん」の概要説明
 13:50〜14:30 プログラム作成・動作確認
 14:30〜17:30 ハードウェアの製作
 ※以降は各チームでのカスタマイズ!

5月22日(日)
 10:15〜12:00 ソフトピアジャパン・センタービル1階で障害物レース
※スケジュールは多少変更となる場合があります。
【宿泊施設について】
今のところ、
 ・通常の宿泊施設10部屋(仮予約中、2,000円)
 ・和室1部屋(10名用、1500円?)
  ↑宿泊しない方も乱入可能ですがシャワーなどは利用できません。
 ・徹夜会場(無料)
を主催者側で確保予定です。
【イベント詳細ページ(Facebook)】http://on.fb.me/l9zDFw

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